どうも、お坊さん大道芸人のとっしゃん(@tossyan753)です。
お坊さんとしての仕事は、法事をしたり葬式をしたりするだけではありません。
お寺を護っていくというのもお坊さんの立派な仕事です。
しかし、現代は急激な勢いでお寺が潰れていっています。
跡継ぎがいないなどの場合もありますが、経営難で崩壊しているお寺が多いみたいですね。
『お寺さん崩壊』という本はそんなリアルな現場を切り取った本なのです。
最初に言っとくけど、坊主丸儲けなんて嘘やで!
なぜ兼業のお坊さんは多いのか
みなさんの周りにも実家がお寺なのに仕事をしている方がいらっしゃると思います。
「仕事をやめてもお寺があるから安心ですね」
なんて思うかもしれませんが、ほとんどの場合、お寺だけでは食っていけないから別の仕事をしています。
仕事で稼いだお金を使ってお寺を護っているという方も少なくありません。
ほんと、坊主丸儲けなんて大嘘なんですよ。
お寺の収入と専業可能ライン
専業でお坊さんが出来るというのは、ある程度の檀家数がないと経済的に不可能です。
坊主丸儲けなんて思われるかもしれませんが、檀家数が少ないと、そもそものお寺の収入がままならないんですよ。
寺院の収入は大きく2つで、
- お布施(法事や葬儀や法要)
- 年会費(護持費)
これをやりくりしながらお寺を運営していきます。
ではどのぐらい檀家数があればいけるのか、本のなかで金額と合わせてリアルな数字が出ていたので引用します。
所属する檀家 (浄土真宗では門徒と呼ぶが 、以降 、わかりやすいように”檀家”と表す)数が多ければ多いほど、ここでの収入額はあがっていく 。
その逆に 、檀家数が少ない寺は 、細い大黒柱しか持ち得ていないわけで 、健全なる財政環境の実現が難しくなる 。その分岐点は 、業界では三百軒が目安と言われている 。ちなみに 、宗派にもよるが 、百軒程度の檀家があるとして 、 お布施の実入りについては概ね年間に 、 「三百万 ~四百万円 」くらいの換算となるだろう 。
『お坊さん崩壊』より引用。太字筆者
この300件が目安で、100件あたり300~400万円の年間収入というのは、かなりリアルな数字だと思います。
檀家数300件、400万円の年間収入って事は、大体1200万円の収入で、結構稼いでるじゃんとなるかもしれません。
ですが、これは単純に収入で、もちろん出ていくお金もあるんです。
支出は普通の家とはレベルが違う
お寺は家のような場所でもありますが、会社のような場所でもあります。
そして宗教施設特有の支出もあり、それがかなりバカにならんのですよ。
光熱費や交通費などもそうですが、お寺には他にもたくさんお金がかかるところがあるのです。
- 法要に関する諸経費(ろうそく代、お茶やお菓子、お話してくれた僧侶へのお礼、お斎の食費など)
- 書籍購入費(檀家さんに配る本や聖典など)
- 衣装代(お坊さんの衣。購入するのも高いし、クリーニング代も高い。)
- 本堂の飾り関連の費用(お仏壇周りの飾りや、お供え、お香など)
こういう費用がそれぞれ結構かかってきます。
あとは、それとは別に建物が老朽化したときのための修繕費用の積立などもあります。
お寺は大きい建物なので、修繕費用もめちゃくちゃ高額になってしまうんです。
そういう支出も計算していくと、1200万円の収入がある檀家300件ラインでも、1家族はなんとか生きていけるぐらいしか残りません。
本の中では住職の給料などについても細かく書かれてありますので、気になる方は読んでみて下さい。
ちなみに僕の給料とほぼドンピシャな金額が書かれてあります笑
お寺は人生で大切な事を考える場所
お寺は経営難で苦しくなっていて、「坊主丸儲け」は本当に言葉が独り歩きしていて、実際は兼業でやっとどうにかなるお寺がほとんどというのはこの本を読むと分かっていただけると思います。
このまま何も手を打たずに時代が進んでいくと、お寺はどんどん潰れてしまい、町からお寺というものがどんどん無くなってしまうのです。
しかし、お寺というのは本当になくなっていいのでしょうか?
私は人間環境学の研究者としてこれまで、人が心地よくなれる地域環境デザインについて調査してきた 。師匠である池田武邦先生 (日本設計元社長 ・ハウステンボス元会長 )とかつて議論するなか 、よい町の条件には 、寺や神社などの精神的な空間が欠かせない 、と意見の一致をみたことは懐かしい思い出だ 。
お地蔵さんや神さんや仏さんに手を合わせる風景が日常にいつも浮かぶ町は 、油断すると荒みがちな私たちの心の中に 、一服の清涼をもたらす効果を備えているとも考えられるからだ 。
『お寺さん崩壊』より一部引用。太字は筆者。
現代はスマホは常にそばにあるし、情報がバンバン流れてきて、心を落ち着けて何かを考えるというのが難しい社会です。
そういう社会で人生をどう生きるかなんて考える時間はあるのでしょうか?
お寺で手を合わせたり、お坊さんとゆっくり話しをすることで、普段はあまり考えていなかった本当に大切な問題に向き合えると思うのです。
そんな人生で大切な事を見つめ直す力をもった場所が、神社仏閣などの精神的な空間にはあるのではないでしょうか。
僕はそういう場所がなくなってはいけないと思います。
そのためにはやはりお坊さんも経営や、どうやってお寺を活用していくかというのをもっと真剣に考えなくてはいけないですね。
まとめ:お寺にもっと関わって欲しい
この本では、お寺が崩壊していくリアルな現場だけではなく、それでもやはり仏道を歩んでいくといった力強さを学べる本でした。
こういう人が出てくるのはやっぱり仏教に人を支える力があるからなんでしょうね。
こういう仏教の魅力をもっと知ってもらうためには、お寺にもっと関わってもらうというのが大切です。
もしお寺やお坊さんに興味があれば、お坊さんとゆるく話す会や、うちのボードゲーム会なんかは、ゆるいイベントなんで気軽な感じで来てください。
今回ご紹介した本もお寺の知られざる中身が満載で、読み物としても面白いと思います。
お坊さんもそうじゃない方も、是非読んで欲しい1冊です!